三角関数の公式を忘れたときは微分をしてみる

微分, 三角関数数Ⅲ


三角関数には公式が多いので忘れることもあると思います。しかし, 既知の公式を微分することで忘れてしまった公式を導けることがあります。

sin の加法定理, 2倍角の公式, 3倍角の公式を覚えている前提で, 微分を実行して cos の公式を導きます。

加法定理

まず加法定理です。

加法定理

\((1) \sin (\alpha+\beta)=\sin \alpha \cos \beta + \cos \alpha \sin \beta \)

\((2)\cos (\alpha+\beta)=\cos \alpha \cos \beta \,- \sin \alpha \sin \beta\)

(1)咲いたコスモス、コスモス咲いた(咲いた=sin , コスモス=cos)
(2)コスモスコスモス、咲いた咲いた
という語呂合わせが有名です。
(2)を忘れてしまったら, (1)を微分することで(2)を導けます。

\((1)\rightarrow(2)\)の導出

\((1)\)の両辺を\(\alpha\)で微分する。

\((\textbf{左辺の微分})=\cos(\alpha+\beta)\)

\((\textbf{右辺の微分})\)
\(=(\sin \alpha)^{\prime}\cos\beta + (\cos\alpha)^{\prime}\sin\beta\)

\(=\cos \alpha \cos \beta \,- \sin \alpha \sin \beta\)

よって \(\cos (\alpha+\beta)=\cos \alpha \cos \beta \,- \sin \alpha \sin \beta\) が成り立つ。

補足: \(\beta\) で微分しても同じ結果が得られます。


2倍角の公式

次は2倍角の公式です。

2倍角の公式

\((3) \sin 2\alpha=2\sin\alpha\cos\alpha \)

\((4)\cos 2\alpha=\cos^2\alpha\,-\sin^2\alpha =2\cos^2\alpha-1=1-2\sin^2\alpha\)

\((3)\rightarrow(4)\)の導出

\((3)\)の両辺を\(\alpha\)で微分する。

\((\textbf{左辺の微分})=2\cos2\alpha\)

\((\textbf{右辺の微分})\)

\(=2(\sin\alpha)^{\prime}\cos\alpha+2\sin\alpha(\cos\alpha)^{\prime}\)

\(=2(\cos^2\alpha -\sin^2 \alpha)\)

よって \(\cos 2\alpha=\cos^2\alpha\,-\sin^2\alpha\) が成り立つ。


3倍角の公式

最後に3倍角の公式です。

3倍角の公式

\((5) \sin 3\alpha= 3\sin \alpha \,-\, 4\sin^3 \alpha\)

\((6) \cos 3\alpha= -3\cos\alpha + 4 \cos^3\alpha\)

(5)は,「サンシャイン引いて夜風が身に染みる」という語呂合わせが有名です。
cosの3倍角は , sinの公式でsinをcosに変えて、符号をひっくり返したものになっています。
(6)を忘れてしまったら, (5)を微分することで(6)を導けます。

\((5)\rightarrow(6)\)の導出

\((5)\)の両辺を\(\alpha\)で微分する。

\((\textbf{左辺の微分})=3\cos3\alpha\)

\((\textbf{右辺の微分})\)

\(=3(\sin \alpha)^{\prime}- 4(\sin^3 \alpha)^{\prime}\)

\(=3\cos\alpha\,-\,4\cdot 3\sin^2\alpha\cdot\cos\alpha\)

\(=3\cos\alpha\,-\,12(1\,-\,\cos^2\alpha)\cos\alpha\)

\(=-9\cos\alpha + 12 \cos^3\alpha\)

よって \( \cos 3\alpha= -3\cos\alpha + 4 \cos^3\alpha\) が成り立つ。