極限が存在するように定数を定める問題

極限数Ⅲ


「極限が存在するように定数を定める問題」を解く際によく使う極限の性質について解説します。

例題1

問題

\(\displaystyle\lim_{x\to 2}\dfrac{ax^2+b}{x-2}=12\) が成り立つように定数 \(a,b\) の値を求めよ。

解答

\(\displaystyle\lim_{x\to 2}\dfrac{ax^2+b}{x-2}\cdot(x-2)=12\cdot0=0\) だから,

\(\displaystyle\lim_{x\to 2}{(ax^2+b)}=0\)

よって, \(4a+b=0\)
\(\therefore b=-4a\)

このとき,
\(\phantom{=}\displaystyle\lim_{x\to 2}\dfrac{ax^2+b}{x-2}\\
=\displaystyle\lim_{x\to 2}\dfrac{ax^2-4a}{x-2}\\
=\displaystyle\lim_{x\to 2}\dfrac{a(x-2)(x+2)}{x-2}\\
=\displaystyle\lim_{x\to 2}a(x+2)=4a\)
これが \(12\) だから, \(a=3\)
\(b=-4a=-12\)
\(\therefore \color{red}{a=3\,,\,b=-12}\)

例題2

問題

\(\displaystyle\lim_{x\to \infty}\dfrac{ax^2+bx}{x-1}=2\) が成り立つように定数 \(a,b\) の値を求めよ。

解答

\(\displaystyle\lim_{x\to \infty}\dfrac{ax^2+bx}{x-1}\cdot\dfrac{1}{x}=2\cdot0=0\) だから,

\(\displaystyle\lim_{x\to \infty}\dfrac{ax^2+bx}{x^2-x}=0\\
\displaystyle\lim_{x\to \infty}\dfrac{a+\frac{b}{x}}{1-\frac{1}{x}}=0\)

よって, \(a=0\)

このとき,
\(\phantom{=}\displaystyle\lim_{x\to \infty}\dfrac{ax^2+bx}{x-1}\\
=\displaystyle\lim_{x\to \infty}\dfrac{bx}{x-1}\\
=\displaystyle\lim_{x\to \infty}\dfrac{b}{1-\frac{1}{x}}=b\)
これが \(2\) だから, \(b=2\)
\(\therefore \color{red}{a=0\,,\,b=2}\)

極限の性質

上の例題のように,『極限が存在するように定数を定める問題』を解く際によく使う極限の性質について説明します。

極限について, 次の性質が成り立ちます。

\(\displaystyle\lim_{x\to a\,} f(x)=\alpha,\,\,\lim_{x\to a\,} g(x)=\beta\) のとき,
\(\displaystyle\lim_{x\to a\,}\,f(x)\,g(x)=\alpha\beta\)

この性質から次のことが導けます。

\(\displaystyle\lim_{x\to a\,} \dfrac{f(x)}{g(x)}=A,\,\lim_{x\to a\,} g(x)=0\) のとき,

\(\displaystyle\lim_{x\to a\,}\,f(x)=0\)

分数関数が収束して, その分母が0に収束するときは分子も0に収束するという意味です。
例題1ではこれを利用しました。

<証明>
\(\phantom{=}\displaystyle\lim_{x\to a}\,f(x)\\
=\displaystyle\lim_{x\to a}\,\dfrac{f(x)}{g(x)}\cdot g(x)\\
=A\cdot 0=0\quad(証明終)\)

\(\)
また, 次のことも導けます。

\(\displaystyle\lim_{x\to \infty\,}f(x)=A\) のとき,

\(\displaystyle\lim_{x\to \infty\,}\,\dfrac{f(x)}{x}=0\)

例題2ではこれを利用しました。

<証明>
\(x\to\infty\) のとき \(\dfrac{1}{x}\to 0\) であるから,
\(\phantom{=}\displaystyle\lim_{x\to \infty\,}\dfrac{f(x)}{x}\\
=\displaystyle\lim_{x\to \infty\,} f(x)\cdot\dfrac{1}{x}\\
=A\cdot 0=0\quad(証明終)\)

同様の方法で分母を \(x^2\) や \(x^3\) にしても0に収束することがわかります。