cos1°が無理数であることの証明
cos1°が無理数であることの証明方法を紹介します。
背理法と数学的帰納法を組み合わせた証明になっています。
関連:tan1°が無理数であることの証明
解答例
問題
\(\cos 1^{\circ}\) は有理数か。
準備
\(\cos (k+1)^{\circ}=\cos k^{\circ} \cos 1^{\circ} {}- \sin k^{\circ} \sin 1^{\circ}\)
\(\cos (k-1)^{\circ}=\cos k^{\circ} \cos 1^{\circ} + \sin k^{\circ} \sin 1^{\circ}\)
を辺々足して整理した式
\(\color{blue}{\cos (k+1)^{\circ}=2\cos k^{\circ} \cos 1^{\circ} – \cos (k-1)^{\circ}}\)
を使います。
\(\cos (k-1)^{\circ}=\cos k^{\circ} \cos 1^{\circ} + \sin k^{\circ} \sin 1^{\circ}\)
を辺々足して整理した式
\(\color{blue}{\cos (k+1)^{\circ}=2\cos k^{\circ} \cos 1^{\circ} – \cos (k-1)^{\circ}}\)
を使います。
解答
[1] \(\cos 1^{\circ}\) が有理数であると仮定する。
加法定理より,
\(\cos (1+1)^{\circ}=2{\cos}^2 1^{\circ}-1\)
であるから, \(\cos 2^{\circ}\) も有理数になる。
(∵ 有理数の和,差,積,商は有理数) [2] \(\cos (k+1)^{\circ}=2\cos k^{\circ} \cos 1^{\circ} – \cos (k-1)^{\circ}\) (準備参照)
だから,
\(\cos (k-1)^{\circ},\,\cos k^{\circ}\) が有理数であるならば, \(\cos (k+1)^{\circ}\) も有理数になる。 [1], [2] より, \(\color{blue}{\cos 1^{\circ}}\) が有理数だと仮定すれば, すべての自然数 \(n\) について \(\cos n^{\circ}\)は有理数である。
一方, \(\cos 30^{\circ}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}\) は有理数ではないため, 矛盾が生じる。
したがって, \(\cos 1^{\circ}\) は有理数ではない。(\(\cos 1^{\circ}\) は無理数である。)
加法定理より,
\(\cos (1+1)^{\circ}=2{\cos}^2 1^{\circ}-1\)
であるから, \(\cos 2^{\circ}\) も有理数になる。
(∵ 有理数の和,差,積,商は有理数) [2] \(\cos (k+1)^{\circ}=2\cos k^{\circ} \cos 1^{\circ} – \cos (k-1)^{\circ}\) (準備参照)
だから,
\(\cos (k-1)^{\circ},\,\cos k^{\circ}\) が有理数であるならば, \(\cos (k+1)^{\circ}\) も有理数になる。 [1], [2] より, \(\color{blue}{\cos 1^{\circ}}\) が有理数だと仮定すれば, すべての自然数 \(n\) について \(\cos n^{\circ}\)は有理数である。
一方, \(\cos 30^{\circ}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}\) は有理数ではないため, 矛盾が生じる。
したがって, \(\cos 1^{\circ}\) は有理数ではない。(\(\cos 1^{\circ}\) は無理数である。)
解答の流れ
手順1: \(\cos 1^{\circ}\) が有理数であると仮定する。
手順2: \(\cos 1^{\circ},\cos 2^{\circ}\) が有理数で, \(\cos (k-1)^{\circ},\cos k^{\circ}\) が有理数のとき \(\cos (k+1)^{\circ}\) も有理数だから, 数学的帰納法により, すべての自然数 \(n\) で \(\cos n^{\circ}\) は有理数になる。
手順3: 一方, \(\cos 30^{\circ}\) は有理数ではないため矛盾する。(30°などの有名角は既知とする)
手順4: したがって, \(\cos 1^{\circ}\) が有理数であるという仮定は間違いである。(背理法)