ペル方程式の練習問題

数列数学的帰納法


次のような形の不定方程式をペル方程式といいます。

\(x^2-Dy^2=1\)

ここで \(D\) は平方数でない自然数です。

この記事では、大学入試におけるペル方程式の頻出問題を解説しています。

問題と解答

問題

自然数 \(n\) に対し, \(a_n,\,b_n\) を \((2+\sqrt{3})^n=a_n+b_n\sqrt{3}\) をみたす整数と定める。
(1) \(a_{n+1},\,b_{n+1}\) を \(a_n,\,b_n\) の式で表せ。ただし, \(\sqrt{3}\) が無理数であることは使ってよい。\(\\\)

(2) \((2-\sqrt{3})^n=a_n-b_n\sqrt{3}\) が成り立つことを示せ。\(\\\)

(3) \({a_n}^2-3{b_n}^2\) の値を求めよ。\(\\\)

解答

(1)
\(\phantom{=}a_{n+1}+b_{n+1}\sqrt{3} \\
=(2+\sqrt{3})^{n+1} \\
=(2+\sqrt{3})\cdot(2+\sqrt{3})^n \\
=(2+\sqrt{3})\cdot(a_n+b_n\sqrt{3}) \\
=2a_n+3b_n+(a_n+2b_n)\sqrt{3}\)
\(a_n,\,b_n,\,a_{n+1},\,b_{n+1}\) は有理数, \(\sqrt{3}\) は無理数であるから(*補足)
\(\color{red}{a_{n+1}=2a_n+3b_n\\
b_{n+1}=a_n+2b_n}\)

(2)
数学的帰納法を用いて
\((2-\sqrt{3})^n=a_n-b_n\sqrt{3}\quad\cdots (*)\)
を示す。
[1] \(n=1\) のとき
\((2+\sqrt{3})^1=2+\sqrt{3}=a_1+b_1\sqrt{3}\) より \(a_1=2,b_1=1\) だから
\((2-\sqrt{3})^1=2-\sqrt{3}=a_1-b_1\sqrt{3}\)
よって, \((*)\) は成立する。

[2] \(n=k\) のとき
\((2-\sqrt{3})^k=a_k-b_k\sqrt{3}\)
が成立すると仮定すると,
\(\phantom{=}(2-\sqrt{3})^{k+1}\\
=(2-\sqrt{3})\cdot(2-\sqrt{3})^k\\
=(2-\sqrt{3})\cdot(a_k-b_k\sqrt{3})\quad \text{(仮定より)}\\
=2a_k+3b_k-(a_k+2b_k)\sqrt{3}\\
=a_{k+1}+b_{k+1}\sqrt{3}\quad \text{( (1)より)}\)
よって \(n=k+1\) のときも \((*)\) は成立する。
[1], [2] よりすべての自然数 \(n\) について \((*)\) は成立する。(証明終)

(3)
\(\phantom{=}{a_n}^2-3{b_n}^2\\
=(a_n+b_n\sqrt{3})\cdot(a_n-b_n\sqrt{3})\\
=(2+\sqrt{3})^n\cdot(2-\sqrt{3})^n\quad\text{( (2)より)}\\
=\{(2+\sqrt{3})\cdot(2-\sqrt{3})\}^n\\
=(4-3)^n=1^n=\color{red}{1}\)

ペル方程式について

問題(3) より \(a_n,b_n\) はペル方程式 \(x^2-3y^2=1\) の自然数解であることが分かります。

\((a_1,b_1)=(2,1)\)と, 問題(1)で求めた漸化式
\(\begin{cases}
{a_{n+1}=2a_n+3b_n\\
b_{n+1}=a_n+2b_n}\end{cases}\)から, \(x^2-3y^2=1\) の自然数解が無数に得られます。

例えば, \((a_2,b_2)=(7,4),\,(a_3,b_3)=(26,15)\) は \(x^2-3y^2=1\) の解になっています。

補足:(有理数)+(無理数)=0

問題(1)の解答で次の性質を使いました。

\(p,q,r,s\)を整数とする。
\(p+q\sqrt{3}=r+s\sqrt{3}\)
が成り立つならば \(p=r,\,q=s\)

これは背理法で証明できます。

証明
上式を変形すると
\(p-r+(q-s)\sqrt{3}=0\quad\cdots\unicode{x2460}\)
\(q-s\neq0\) と仮定すると
\(\sqrt{3}=\dfrac{r-p}{q-s}=\,\)(有理数) となって \(\sqrt{3}\) が無理数であることに反する。
よって \(q-s=0\)
これと\(\unicode{x2460}\) より \(p=r\)
\(\therefore\,p=r,q=s\) (証明終)

この記事では\(\sqrt{3}\) が無理数であることは証明無しで使いましたが, 証明する場合は「背理法を使って無理数であることを証明する例題」の例2を参照してください。