二項係数の和の計算 典型問題
二項係数がらみの和の計算でよく出てくる以下の等式の証明方法を解説します。
(2) \(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,(-1)^k \cdot {}_n{\rm{C}}_k=0 \\ \)
(3) \(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\, k\cdot{}_n{\rm{C}}_k= n\cdot 2^{n-1} \\ \)
(4) \(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,\dfrac{{}_n{\rm{C}}_k}{k+1}=\dfrac{2^{n+1}-1}{n+1} \\ \)
関連:二項係数 \({}_n{\rm{C}}_k\) の公式については 二項係数の公式 をご覧ください。
二項定理を用いた証明の方針
二項係数がらみの等式を証明するには, 二項定理を使うのが定番です。
\((a+b)^n =\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k \,a^{n-k}\,b^k\)
特に, \(a=1,\,b=x\) とおくと,
\((1+x)^n =\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k\,x^k\)
二項定理の公式に \(x=1\) や \(x=-1\) などの値を代入したり, 二項定理の公式を微分, 積分した式を使うことで, 等式が成り立つことを証明します。
(1)の証明
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k=2^n\) の証明
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k\,x^k = (1+x)^n\)
この式で, \(x=1\) とおくと,
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k=2^n\) (終)
(2)の証明
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,(-1)^k \cdot {}_n{\rm{C}}_k=0 \) の証明
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k\,x^k=(1+x)^n \)
この式で, \(x=-1\) とおくと,
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k\,(-1)^k =0\) (終)
(3)の証明
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\, k\cdot{}_n{\rm{C}}_k= n\cdot 2^{n-1} \) の証明
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k\,x^k=(1+x)^n \)
両辺を \(x\) で微分すると,
\(\displaystyle \sum_{k=0}^n k\cdot{}_n{\rm{C}}_k\,x^{k-1} = n(1+x)^{n-1}\)
この式で, \(x=1\)とおくと,
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\, k\cdot{}_n{\rm{C}}_k= n\cdot 2^{n-1} \) (終)
(4)の証明
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,\dfrac{{}_n{\rm{C}}_k}{k+1}=\dfrac{2^{n+1}-1}{n+1} \) の証明
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k\,x^k=(1+x)^n \)
両辺を \(0\) から \(1\) まで定積分する。
左辺の積分
\(\phantom{=}\displaystyle \int_0^1\left(\sum_{k=0}^{n}\,{}_n{\rm{C}}_k\,x^k \right)\,dx\\
=\displaystyle\int_0^1 ({}_n{\rm{C}}_0 +{}_n{\rm{C}}_1 x +{}_n{\rm{C}}_2 x^2 +\cdots +{}_n{\rm{C}}_n x^n) \,dx \\
=\left[{}_n{\rm{C}}_0 x + {}_n{\rm{C}}_1 \dfrac{x^2}{2}+{}_n{\rm{C}}_2 \dfrac{x^3}{3}+ \cdots + {}_n{\rm{C}}_n \dfrac{x^{n+1}}{n+1}\right]_0^1 \\
={}_n{\rm{C}}_0 + {}_n{\rm{C}}_1 \dfrac{1}{2} +{}_n{\rm{C}}_2 \dfrac{1}{3} + \cdots +{}_n{\rm{C}}_n \dfrac{1}{n+1} \\
=\displaystyle\sum_{k=0}^n \dfrac{{}_n{\rm{C}}_k}{k+1} \\ \)
右辺の積分
\(\displaystyle \int_0^1 (1+x)^n \,dx\\
=\displaystyle \left[\dfrac{(1+x)^{n+1}}{n+1}\right]_0^1 \\
=\displaystyle \dfrac{2^{n+1}-1}{n+1}\)
したがって,
\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n}\,\dfrac{{}_n{\rm{C}}_k}{k+1}=\dfrac{2^{n+1}-1}{n+1} \) (終)