文字係数の1次方程式、1次不等式

関数・方程式と不等式


1次方程式 ax=b
1次不等式 ax>b
の解き方を説明します。a,b は定数です。
単純にaで割るだけではダメで、場合分けが必要です。

1次方程式 ax=b の解

問題

実数 \(x\) についての方程式
\(ax=b\)
を解け。ただし \(a,b\) は実数の定数とする。

解答

\(a\) が \(0\) か \(0\) でないかで場合分けする。
\([1]\,a\neq 0\) のとき, \(\color{red}{x=\dfrac{b}{a}}\)

\([2]\,a=0\) のとき, 与えられた方程式は
\(\quad 0\cdot x=b\) となる。
\(\quad\)\(b\) が \(0\) か \(0\) でないかでさらに場合分けする。

\([2\text{-}\rm{i}]\)\(\,b\neq 0\) のとき
\(\quad 0\cdot x\neq0\)
\(\quad\)これを満たす \(x\) は存在しないので, 解なし

\([2\text{-}\rm{ii}]\)\(\,b=0\) のとき
\(\quad 0\cdot x=0\)
\(\quad\)この式は \(x\) にどのような実数を代入しても成り立つので, \(x\) は任意の実数

以上より,
\(a\neq 0\) のとき, \(x=\dfrac{b}{a}\)
\(a=0,\,b\neq 0\) のとき, 解なし
\(a=0,\,b=0\) のとき, \(x\) は任意の実数

解説
\(ax=b\) を \(a\) で割ると \(x=\dfrac{b}{a}\) ですが, \(0\) で割ってはいけないので, \(a=0\) と \(a\neq 0\) で分けて考えます。
数式を文字で割るときには, その文字が \(0\) であるかどうかに注意してください。

\(0\cdot x\) は \(x\) がどんな数でも \(0\) になるので, \(b\neq 0\) のときに \(0\cdot x=b\) を満たす \(x\) は存在しません。


1次不等式 ax>b の解

問題

実数 \(x\) についての不等式
\(ax>b\)
を解け。ただし \(a,b\) は実数の定数とする。

解答

\(a\) の符号で場合分けする。
\([1]\,a>0\) のとき, \(\color{red}{x>\dfrac{b}{a}}\)

\([2]\,a<0\) のとき, \(\color{red}{x<\dfrac{b}{a}}\)

\([3]\,a=0\) のとき, 与えられた不等式は
\(\quad 0\cdot x>b\) となる。
\(\quad\)\(b\) の符号でさらに場合分けする。

\([3\text{-}\rm{i}]\)\(\,b>0\) のとき
\(\quad 0\cdot x>b\) を満たす \(x\) は存在しないので, 解なし

\([3\text{-}\rm{ii}]\)\(\,b=0\) のとき
\(\quad0\cdot x>0\) を満たす \(x\) は存在しないので, 解なし

\([3\text{-}\rm{iii}]\)\(\,b<0\) のとき
\(\quad 0\cdot x >b\) は \(x\) にどのような実数を代入しても成り立つので, \(x\) は任意の実数

以上より,
\(a>0\) のとき, \(x>\dfrac{b}{a}\)
\(a<0\) のとき, \(x<\dfrac{b}{a}\)
\(a=0,\,b\geqq 0\) のとき, 解なし
\(a=0,\,b<0\) のとき, \(x\) は任意の実数

解説
方程式のときと同様に, \(a=0\) かどうかで場合分けが必要です。
さらに, 不等式を負の数で割ると不等号の向きが変わるので, 結局は \(a\) の符号(正,0,負) で場合分けします。