整数係数のn次方程式の有理数解

関数・方程式と不等式


【定理】
整数係数のn次方程式
\(a_n x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x+a_{0}=0\,\,\)(\(a_0,\,a_1,\,\cdots ,a_n\) は整数)
が有理数解を持つならば,その解は
\(\color{blue}{\dfrac{a_0\textbf{の約数}}{a_n\textbf{の約数}}}\) に限られる。

とくに \(a_n=\pm 1\) のとき, 有理数解は整数であり, \(a_0\) の約数に限られる。

※参考書によっては, \(\pm\dfrac{a_0\textbf{の約数}}{a_n\textbf{の約数}}\) のように符号をつけて表記されていることもありますが, 符号があってもなくても同じものだと考えてよいです。約数は負の数も含むことに注意してください。(例:6の約数は±1,±2,±3,±6)

本記事では, この定理の証明と, この定理を用いて方程式の解を求める例題を紹介します。

証明

上記の定理は次のように証明できます。

\(a_n x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_1x+a_{0}=0\,\quad(*)\)
の有理数解を\(\dfrac{q}{p}\)(\(p,q\) は互いに素な整数) とおいて \((*)\) に代入すると,
\(a_n\left( \dfrac{q}{p}\right)^n+a_{n-1}\left( \dfrac{q}{p} \right)^{n-1}+\cdots + a_{1}\left(\dfrac{q}{p}\right)+a_0=0\)
両辺を \(p^n\) 倍すると,
\(a_n q^n +a_{n-1}q^{n-1}p+\cdots +a_1 qp^{n-1}+a_0 p^n=0\quad (**)\)
\(\therefore a_n q^n=-\left(a_{n-1}q^{n-1}p+\cdots +a_1 qp^{n-1}+a_0 p^n \right)\)
\(\phantom{\therefore a_n q^n}=(p\,\textbf{の倍数})\)
であり, \(p\) と \(q\) は互いに素なので, \(a_n\) は \(p\,\textbf{の倍数}\)である。
すなわち, \(p\) は\(a_n\) の約数である。
同様に, \((**)\) より
\(a_0 p^n = -\left(a_n q^n + a_{n-1}q^{n-1}p+\cdots +a_1 qp^{n-1} \right)\)
\(\phantom{a_0 p^n}=(q\,\textbf{の倍数})\)
であり, \(p\) と \(q\) は互いに素なので, \(a_0\) は \(q\,\textbf{の倍数}\)である。
すなわち, \(q\) は\(a_0\) の約数である。
以上より, \((*)\) の有理数解は
\(\dfrac{q}{p}=\dfrac{a_0\textbf{の約数}}{a_n\textbf{の約数}}\) となることが示された。(終)

証明の際に次の性質を使いました。

\(a,b,c\) を整数とする。
\(a\) と \(b\) が互いに素のとき, \(bc\) が\(a\) の倍数ならば \(c\) は \(a\) の倍数である。

例題

問題

\(f(x)=2x^3+x^2+6x+3\) とする。
方程式 \(f(x)=0\) の解を求めよ。

解答の流れ
3次方程式を解くだけの問題です。
定理を用いて有理数解の候補を絞り込めば, やみくもに数字を代入するよりも解が求めやすくなります。

有理数解があるとすれば, その候補は
\(\dfrac{\textbf{3の約数}}{\textbf{2の約数}}\)
つまり, \(\pm \dfrac{1}{1},\,\pm\dfrac{3}{1},\,\pm\dfrac{1}{2},\,\pm\dfrac{3}{2}\) に限られます。(この中に解がなければ \(f(x)=0\) は有理数解を持ちません)
\(x\) が正の数のとき, 明らかに \(f(x)>0\) だから, 正の数は \(f(x)=0\) の解になりません。
以上から, 有理数解の候補は \(-1,\,-3,\,-\dfrac{1}{2},\,-\dfrac{3}{2}\) に絞られます。
これらの値をそれぞれ \(f(x)\) に代入します。すると, \(f\left( -\dfrac{1}{2} \right) =0\) が確認できます。
よって \(f(x)\) は \(\left( x+\dfrac{1}{2}\right) \) を因数に持ち,
\(f(x)=2\left(x+\dfrac{1}{2}\right)(x^2 +3)\) と因数分解できます。
したがって, 解は \(\color{red}{x=-\dfrac{1}{2},\pm \sqrt{3}\,i}\) (ただし \(i\) は虚数単位)