tan1°が無理数であることの証明

三角関数背理法, 数学的帰納法


tan1°が無理数であることの証明方法を紹介します。
背理法と数学的帰納法を組み合わせた証明になっています。
関連:cos1°が無理数であることの証明

解答例

\(\tan 1^{\circ}\) は有理数か。

解答

[1] \(\tan 1^{\circ}\) が有理数であると仮定する。
[2] 加法定理より,
\(\displaystyle \tan (k+1)^{\circ}=\dfrac{\tan k^{\circ}+\tan 1^{\circ}}{1-\tan k^{\circ} \tan 1^{\circ}}\)

よって, \(\tan k^{\circ}\) が有理数であるならば, \(\tan (k+1)^{\circ}\) も有理数になる。
(\(\because\) 有理数の和、差、積、商は有理数)

[1], [2] より, \(\color{blue}{\tan 1^{\circ}}\) が有理数だと仮定すれば, すべての自然数 \(n\) について\(\tan\,n^{\circ}\) は有理数である。
一方, \(\tan 30^{\circ}=\dfrac{1}{\sqrt{3}}\) は有理数ではないため, 矛盾が生じる。
したがって, \(\tan 1^{\circ}\) は有理数ではない。(\(\tan 1^{\circ}\) は無理数である。)

解答の流れ

手順1: \(\tan 1^{\circ}\) が有理数であると仮定する。

手順2: \(\tan 1^{\circ}\) が有理数で, \(\tan k^{\circ}\) が有理数のとき \(\tan (k+1)^{\circ}\) も有理数だから, 数学的帰納法により, すべての自然数 \(n\) で \(\tan n^{\circ}\) は有理数になる。

手順3: 一方, \(\tan 30^{\circ}\) は有理数ではないため矛盾する。(30°などの有名角は既知とする)

手順4: したがって, \(\tan 1^{\circ}\) が有理数であるという仮定は間違いである。(背理法)

補足: 1/√3 が無理数であることの証明

\(\dfrac{1}{\sqrt{3}}\) が無理数であることは既知としました。既知としない場合は下記のように証明します。

\(\dfrac{1}{\sqrt{3}}\) が無理数であるこのと証明
証明1
\(\dfrac{1}{\sqrt{3}}=\dfrac{q}{p}\) (\(p\)と\(q\)は互いに素な自然数)
と仮定する。両辺を二乗して整理すると,
\(p^2=3q^2\quad\cdots(*)\) となる。
素因数3の個数が, 左辺は偶数個, 右辺は奇数個となり矛盾する。
したがって, \(\dfrac{1}{\sqrt{3}}\)は無理数である。

証明2
\((*)\) まで証明1と同じ
\(p^2=3q^2\) の右辺は \(3\) を因数にもつので, \(p\) も\(3\) を因数にもつ。
よって \(p=3a\) とおくと,\((*)\)は \(3a^2=q^2\) となり \(q\) も \(3\) を因数にもつ。
しかし, \(p\) と \(q\) は互いに素であるので矛盾する。
したがって, \(\dfrac{1}{\sqrt{3}}\)は無理数である。